高福祉・高負担の国、デンマーク・フィンランドは単なる社会主義的な国かと思っていたが、どっこい国際競争力でもダントツの経済成長(フィンランドは国際競争力世界第1位、デンマークも上位)を果たしていて「格差無き成長」を実現している。

 

その秘密はどうも「将来に対する不安が無いので安心して働ける」と言う安心感と徹底した教育制度とハイテク産業への国を挙げての投資、国民全体が政治に関心を持ち参画し、政治腐敗・官僚主義を排除したことにあるようだ。

  

フィンランドは第2次世界大戦で敗戦国となり、ベビーブームは終わり団塊の世代が高齢化を迎え少子高齢化に入った、日本と極めて似たような環境の国だ。

 

しかし、税負担率は日本が38%に対してフィンランドは実に60%、普通なら働く意欲をそがれて経済成長なんかするわけが無いと思うのだが、

例えば月収84万円の夫婦子供1人の家庭で4LDK100平米6,000万円の家に住み、税・ローン・食費などの負担は74万円、

残りの10万円も旅行などのレジャーに使い貯金は0、サーモン2人分買うのに2600円、2日分の食費だけで6500円、その内税金が食料品が17%、その他が22%と言う重税なのだ

 

が、「安心して子供を育てられ、将来に対する不安は無く、税金が高いとは思わない」「本当に幸せな生活なので高い税金も全く苦にならない」と言っている。

 

来年2人目が生まれるが、出産費用はただ、4万円相当のおむつや服・絵本などの育児セットが贈られる。育児休暇も妻が9ヶ月・夫が4ヶ月、夫婦で休暇を取るそうだ。

 

年金生活者も31万円の支給に対して28%の所得税がかかるが、「いろんな福祉を受けられるので税金が高いとは思わない」と言っている。

  

それにも関わらず驚愕なのが経済成長だ。90年代初頭フィンランドは大不況に見舞われ、失業率は17%になったが、そのどん底からわずか7年で2001年に国際競争力世界第1位になり、その後も1位を3回取っている。

 

その秘密は、ハイテク研究開発と教育に国の予算を重点投入したことだ。

 

91年にソ連崩壊に始まる輸出激減に伴う倒産の危機に追い込まれながら、今や携帯電話市場シェア1位売上高8兆円の企業に躍進したノキアも、それまで製紙・電気・通信など幅広い分野に手を出し巨大化していたが、すべて撤退し、社運を賭けてデジタル携帯電話1本の研究開発に全力をそそいだことと、

 

組織改革を断行したことだ。すべての役職を廃止し、社員の官僚主義の一掃と前CEOオルマ氏が社員とオープンに話し合い徹底的に討論し、「すべての社員が携帯電話世界一を目差して燃えていた」と言う社員との一体感作り出した。

 

それと政府が積極的にそれを支援し政・官・学の連携があったことも大きい。フィンランドでは政府機関・産業界・大学が連携してハイテク技術を共同開発していった。ノキアも実はこの恩恵に授かり、デジタル携帯電話もその中から生まれていることを見逃してはならない。

  

ヘルシンキ大学は国立大学でありながら、予算の半分以上を産業界との共同プロジェクトで賄っている。又、政府機関もその共同プロジェクトに積極的に関わり、企業もその研究開発費に十分な予算が取れないこともあり、テケス(フィンランド技術省)が実に600億円の予算を持ち(GDPの4%、日本はわずか0.1%)、企業などから集められたスタッフ350人が審査をし、優秀なプロジェクトには予算の15~50%を支援している。

 

又、このテケスがどんな効果をもたらしたのか、政府・企業に評価されるしくみになっており、日本のろくな仕事もしないのに金だけばら撒いて「母屋ですき焼き」の天下り先や財団法人・独立行政法人などとはわけが違う。

  

又、テケスは大学とも連携して、ベンチャー企業の創業を支援し、大学生が自ら開発した技術を商品化するため会社を興すパターン多いという。例えばキッチンのコンロ上のフードに自動消化システムを開発した大学生がテケスの融資を得て会社を興し、ヨーロッパ各地から引き合いが来ているケースでは、社長が高々30~40万円の給料しかもらっっていない(従業員と一緒の給料)のだが、「会社は金儲けの為に作ったのでは無くて、あくまで自己実現であり、良い仕事をすればお金は付いてきます」と言っているのが興味深い。

←私利私欲のために年間何十億の金をもらってめちゃくちゃなことをやってたアメリカ・イギリス・フランスなどの金融機関のCEOに爪の垢を煎じて飲ましてやりたい!

  

又、日本と決定的に違うのが、教育(未来への投資)を惜しみなくしていることだ。フィンランドは人口高々500万人の国で優秀な人材を労働市場に送り出すことが最大の課題であったこともあり、田舎にいても貧しい人でもすべても人に十分な教育を受けられるよう環境つくりをし、小学校から大学まで教育費を無料、更に大学生には生活費月額7万円を支給した。

 

その結果、フィンランドは2004年に学習到達度世界一位になった。小学校では23人の児童に2人の教師が付き、すべての教師が修士号を持ち、社会的評価も高い。

 

又、学習塾なんてものは存在しなく、15分の休み時間にみんな宿題をこなし、放課後や家で勉強なんかしない。それでもみんな子供たちが生き生きとして世界一になったのは、将来への不安が無く、みんな平等であると言う意識が定着しているからなのか?←この点でも結局、いい学習塾に行かせられて金のある人ほどいい大学に行ける日本の風土とは全く違う。

  

国民の政治への参画意識も日本とは全く違う。高福祉・高負担と言うこともあり、国民の政治への関心が高く、ごく普通の人が政治活動をし、市の委員会に参加している。

 

18歳から議員に立候補でき、選挙活動費は自己負担が宣伝費100ユーロ(1万2千円)のみで、各大学で選挙討論会をしたりインターネットで政策を主張するだけで、足りない分はカンパで補う。

 

政治家自身がフィンランドのような小国が世界に負けずに経済成長していくには、政治汚職が無く信頼される社会で絶えず努力していくことが重要だと言っている。

 

つまり、国民全員が監視している中で政治・選挙が行われ、極めてクリーンな社会を築いている。←この点は人口500万人だから出来ることなのか?いや日本だって中央集権の利権で凝り固まって肥大化しすぎた中央官庁の権限を地方に委譲し、道州制を導入すれば絶対出来るはず。

ようするに、10人中9人が非常に満足していると答えているフィンランドの一番の肝は「国民の政府に対する信頼の高さ」この言葉に集約されている。

フィンランドの人達は社会に育てられたと言う意識が非常に強く、必然的にその意識が社会に貢献しようと言う意識に繋がっていっている。

それと国民の政治に対する参画意識が日本とは比べ物にならなく、税金は高いけれどもその税金が国民の為に使われていて、使い道も自分たちで決めていると意識が、高い満足度に繋がっていっている。政治と国民の信頼関係の上に成り立っているんだと言うことです。

日本政府・官僚よ!フィンランドの政治家の爪の垢を大量に輸入して、それを毎日お茶の変わりに煎じて飲んどれ!

筑紫哲也も最後の多事総論で言っていたよ。「政治と言うのは、今まで貢献してくれた老人にお金を出すか、将来をしょって立つ子供たちに投資して行くか、その配分をどうするかである。今の日本はそのどちらもやって無い。私は癌で、その癌を克服するためにエネルギーを消耗しすぎて、本来の人間として生きていく為のエネルギーをさけないでいる。日本はまさに癌に侵されている」

マーチン曽根のフィンランドに学ぶでした。